特にこれといった予定のなかった日曜日。そんな静かな朝を破ったのは、長男の「海に行きたい!」という熱烈なリクエストでした。
前々から「釣りに行きたい」と言い続けていた彼にとって、今日は絶好のチャンスに見えたのでしょう。とはいえ、今から急に海へ向かうのは少し無理があります。がっかりする息子の顔を見て、私は一つの約束をしました。
「じゃあ、1ヶ月後に絶対行こう。その代わり、今日はその日のための『予習』をしない?」
釣って、その場で捌いて食べる。それが彼の理想です。ならば、まずは家で魚を一匹丸ごと捌く練習をしてみればいい。その提案に、息子はすっかりその気になりました。
キッチンが「戦場」に変わった午前中
午前中に近所の魚屋さんへ向かい、意気揚々と買ってきたのは立派なアジが3匹。しめて699円。今日は母の日ですが、息子の中に「お昼を準備してあげよう」という殊勝な動機があったわけではなさそうです(笑)。
でも、それもまた良し。食育を兼ねた体験学習イベントとして、今日の台所は彼に任せることにしました。
しかし、現実はそう甘くありません。いきなりキッチンに向かうも、やはり魚料理の基本、三枚おろしは難しい。私も決して得意ではありません。後ろから「汗汗」しながらフォローし、パパの力も借りながら、なんとかそれらしい形になっていきました。
特に苦戦したのは骨抜きです。一本一本、慎重に抜いていく作業。つくづく、私たちが普段当たり前のように食べているお刺身が食卓に届くまでに、どれほど大変な工程があるのかを思い知らされました。
3匹699円という数字の裏側
FP(ファイナンシャルプランナー)としての視点でこの光景を眺めると、面白いことに気づきます。「3匹で699円」。量だけを考えれば、確かに節約につながるお得な買い物です。
しかし、この格闘した時間と手間、そしてプロの技術料を乗せたらどうなるでしょうか。
私たちは普段、スーパーで並ぶ綺麗な切り身を買うとき、単に「魚」を買っているのではなく、プロの「時間」と「技術」という付加価値を買っているのだと痛感します。この手間を考えれば、お刺身パックの値段は決して高くはありません。むしろ、とんでもなくありがたいものです。資産運用でも「時間」を味方につけることが重要ですが、家事における「時間のショートカット」もまた、大きな価値なのだと再確認しました。
不格好なご馳走と「丁寧な暮らし」の錯覚
格闘の末、かろうじてそのまま食べられる部分は不格好なお刺身に。骨が抜けなかった部分は焼き魚に。そして身が取りきれなかった骨は、出汁を引いてお味噌汁に。余すことなく、アジの命をいただきました。
普段、効率を重視して家計や時間を管理している私にとって、一匹の魚とこれほど長く向き合うことは稀です。でも、息子と一緒に魚の匂いや感触を感じながら過ごした時間は、最近久しく忘れていた丁寧な暮らしという感覚を、少しだけ思い出させてくれました。……いえ、実際は「汗汗」の連続だったので、それは心地よい「錯覚」だったのかもしれませんが。
予定調和ではない日曜日。でも、一匹の魚から得た「価値の再発見」は、どんな計画的な休日よりも豊かなものでした。note毎日更新を続ける中で、こうした日常の何気ない変化を言葉にできる幸せを噛み締めています。